老舗加工事業者の自社製品開発を支援

持ち前の技術とアイデアを活かす道を探せ

A社は包装資材の卸会社。主力は食品のパッケージデザインであり、さらに食品の商品開発から販売までのプランニングも行う。自社農園を構え、産地直売所も開設しており、農産物の加工・販売など6次産業化にも取り組んでいる。起業から25年。「ゼロからの挑戦」を企業理念に、アイディアマンの社長が従業員30人ほどを率いている。

この会社のためにできること、本業支援とは何だ?

 脱サラしてパッケージ会社を設立、農園を作って産地直売所を開設、里芋のCD(サイクロデキストリン:デンプン類に酵素を作用させて得られる環状オリゴ糖。特異的な包接性を有している)粉末化に成功、それ以降農産物の粉末加工やそれを麺に練り込んだ商品の開発・製造・販売に取り組んでいる。また、米粉の商品開発にも力を入れており、工場には製麺機、製粉機も設置、米粉麺にする技術とともにスープも提供して全国的に普及させてきた――など、A社の取り組みや手がけている商品は多種多様。お客さまのニーズに応えられる、選ばれる会社になる、そして地域に貢献できる会社でありたいと、社長は常に先を見据えて挑戦していた。

しかし藁谷は社長から、事業の話をお聴きしてもなかなかA社の事業内容がつかめなかった。気さくに言葉をかけてくれる社長を前にして、「この会社のために自分ができることは何だろう?」と、藁谷は本業支援の意味を考えあぐねていた。

オンリーワンの強みのある商品で勝負を賭ける

 「まいったな……」。社長が腕組みして思案顔を見せたのは、2011年3月に起こった東日本大震災からしばらく経ってからだ。震災が起こったことで、A社は仙台にある多くの取引先を失ってしまったのだ。何とか取引先の再起を願っていたがそれもままならず、その売上げの穴を埋める商品に社長は悩んでいた。ガクッと落ちた県外シェアの穴を埋めるモノ、事業展開。自分の出番だ、と藁谷は思った。「社長、鮮度保持の袋、やりましょう!」藁谷は社長に言った。 鮮度保持袋は業界内でも注目されているもので、袋自体に小さな穴を開けているものもあるが、A社の袋は違う。天然素材の高機能ポリフェノール抗酸化効果に天然糖質トレハロースを使用して開発された、革新的な包装資材なのだ。原料は他社から調達するが、袋に塗布する技術がA社にはあった。これを売らない手はない。こんな鮮度保持袋を待っている業者がきっといる。藁谷は銀行内や仙台との「じもとホールディングス」のネットワークに「鮮度保持袋を必要とするところはないですか」と声をかけた。そこで出た案が、スーパーだった。藁谷はさっそく、あるスーパーに行って話をしてみたが、返ってきたのは「うちみたいな商売は日持ちしたら困るんだよね」という言葉。確かに商品の回転のことを考えれば、日持ちするための袋は歓迎されない。野菜や果物の鮮度保持は消費者にとってはニーズがあるが、売る側の店にとってはメリットはない。藁谷はふいを突かれたような気になったが、ここで引くわけにはいかなかった。勝負するなら、会社が強みとしている商品で勝負したい。その気持ちは社長も同じだった。

オンリーワンの強みがカタチになった瞬間

「誰かのために」という気持ちが自分を突き動かしていく

次の展開について思案していると、仙台のある支店から「食品のフランチャイズ本部はどうか」という話がきた。 肉は、1日、2日もつだけで廃棄のコストがだいぶ変わってくるのだという。食品会社が宮城から秋田や青森まで肉を送るのに、その鮮度保持袋を提案したらいいのでは、という情報だった。なるほど!藁谷はさっそく相手先とのセッティングを考えた。社長の目が、輝いた。「いろいろ情報をありがとね」。 A社と食品のフランチャイズ本部との話が始まった。もしこの契約が成立すれば、これはA社が会社として次のステージへ上がるための足掛かりになると藁谷は確信している。

本業支援とはいったい何だろうと思うことがある。ただ、A社との関わりを通してわかったことがある。銀行がサポートのすべてができるわけではないが、その会社にとって次へ進むためのきっかけづくりにはなれる、ということ。この社長のために何かしたい、という思う気持ちが自分を走らせたということ。事業の成功に向けて、A社も、藁谷も、これからが本当の勝負だ。